半年振りに訪れた西城町。「久しぶり」というのではなく、夏の延長上のような感覚があります。昨年夏の撮影中は、大変お騒がせいたしました。私は撮影隊の先頭に立って叫んでいました。昨年11月に映画が完成し、いろんな形を経て、ついにここ西城町での公開に至りました。皆さんと共に映画を作ることができたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。
この映画のテーマの一つ、「合併」がこの3月31日に現実のものになります。その前に、西城町で上映したい、という思いを実現することができ、大変感慨深く思っています。
映画が上映されるウイルホール。まさにそこでクライマックスシーンを撮影しました。舞台上で、伊原剛志さん演じるイッちゃんと、柳家花緑さん演じる西野が、まちの将来、そして合併について激論を交わします。
「ヒナゴンは、町の宝じゃ」
実は、この二人の思いは同じなんです。二人ともふるさと比奈を愛しています。いろいろな思いがあるから出て来た言葉だと思います。
ヒナゴンはロマン、理想。そして町民は現実、生活なんです。これが共に在ってほしいというのが、原作者の重松清さんの思いであり、我々の思いでもあります。
この言葉、比奈町を「映画」に置き換えてみます。
「ヒナゴンは、映画の宝」
彼ら役者たちは、確かにこのシーンの主役かもしれない。でも、あの瞬間は町民の皆さんが主役だったのです。皆さんはそれぞれがとてもいい表情をしていました。私は東京に戻って、撮影には関わっていない編集スタッフたちと作業を進めたのですが、彼らも「本当にいい表情をしているね」と言っていました。なぜでしょうか。
それは、映画の中では比奈町であるけれども、やはり西城町なんです。合併は現実の話なんです。
そのほかのシーンにも町民の方にたくさん出てもらいました。その都度監督としていろんな注文を出しましたが、皆さんはそれに応えてくれる。私はお世辞を言う人間ではないのですが、皆さん芸達者なんですね。台詞のある人もない人も、本物の町民というリアルさ以上の部分があったと思います。カメラの前で演じるというのは大変なことです。プロの役者でさえ緊張するのですから。だから、もしかしたらこの映画は西城町でなくてはうまくいかなかったのかも知れません。
ここ西城町で、協力というレベルを超えて共に創ったこの映画は、西城町の皆さんにとって「宝物」であってほしいと願います。そしてその宝物を、誇りに思っていただきたいと思います。
エンドロールの後ろに、西城町の歴史の写真、つまり「過去」が映っています。そして、「現在」の西城の町を駆け抜ける子どもたちの姿を映しています。彼らは30年前を演じた子どもたちですが、敢えて現在のありのままの姿に戻ってもらっています。彼らは「未来」を持っています。そして、主題歌「すばらしい日々」が流れます。これは西城町のためのシーンです。
ぜひ、ゆっくり映画をご覧ください。映画は永遠に消えません。映画を通して、ふるさとの暮らしや思い出を見つめ直していただければうれしいです。そして、ぜひこの思いを広めてください。皆さん、またお会いしましょう。
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