広島県廿日市市に住む大倉綾華(おおくら あやか)さんは、比奈小学校5年生の平野彩花役を演じました。少し恥ずかしがり屋さんですが、しゃんと伸びた背筋と真っすぐな瞳が凛とした印象の女の子です。お母さんの貴子さんと一緒にご自宅でお話をうかがいました。
 ダンスの経験があり、テレビに出演することにも興味があった綾華さん。中国新聞での記事を見て応募しました。「オーディションでは、学校でのシーンのセリフをもらってやりとりをしました。合格してとってもびっくりしました」。その後、「平野彩花役」との連絡があり、夏休みに入るとすぐ、中国放送での練習が始まりました。彩花役はたくさんのシーン、セリフがあり、覚えるのが大変だったそうです。「一人で練習していたようです。私にはその姿を見せないのですが、こつこつ努力するタイプなので…」(貴子さん)。見せていただいた台本には、綾華さんが鉛筆で書いた「一日一回声に出して読む」との文字がありました。その文字から綾華さんのがんばりと強い意志が伝わってきました。
 撮影が始まって、当初は緊張して涙が出たこともあったそう。「何事も『これをやりなさい』と私から言うことはなく、本人がやりたいと言ったことは納得いくまで…という考えなんです」という貴子さん。「今回は自分でやろうと決めたこと。だから、最後まで、これまでにないがんばりを見せてくれたと思います」と振り返ります。
台本の表紙には「地御前(廿日市の地名)のあやかへ」と渡邊孝好監督のサインが書かれています
 映画の現場は移動がとても多かったそう。また、ヒナゴンを探しに行った森の中のシーンはひろしま県民の森で三日間かけて撮影されました。終了は翌朝になることもあり、ハードな毎日だったそうです。その一方で、共演した俳優さんたち、スタッフの皆さんとても優しくしてくださったそうで、特に週刊文鳥の編集者役の永田めぐみさんとはとても仲良しに。「メッセージカードやプレゼントをもらいました。とってもうれしかったです」と話してくれました。また、演出をしていただいた助監督の武正晴さんのことは「武パパ」って呼んでいたそうで「厳しかったけどとても優しい。クランクアップの時は花束を渡してくださいました」と笑顔で話してくれました。
 撮影が終わっての感想は、「とっても楽しかった。思い出がたくさんできました」(綾華さん)、「映画の作り手の皆さんの大変さを実感しました。テスト、リハーサル、本番を納得いくまで重ねていく…とても大変な現場です。これまで映画を見るといえば、気軽に借りて来て家のテレビで見ていたのですが、これからはちゃんと映画館に行って大きなスクリーンで見なければいけないなと思いました」(貴子さん)。
 そして、「この映画がなければ、家族みんなで県民の森に行って泊まったりすることもなかったでしょうし…。本当に綾華のお陰でたくさんの思い出をもらったように思います」と何度も綾華さんに「ありがとね」と繰り返していらっしゃいました。
 「映画の公開はすごく楽しみです。早く見たいけど、自分が出るシーン、特に泣くシーンは少し恥ずかしい。弟が出たシーンが楽しみです」と少し照れながら話してくれました。それでも将来の夢は?と尋ねると「女優さんになりたいです」と元気に答えてくれた綾華さん。またオーディションに挑戦したい、という思いも持っているそうです。未来を見つめるまなざしはとても輝いていました。

「武パパ」こと助監督の武さん
県民の森で弟の司くんと 司くんもエキストラで参加