上映情報 「ヒナゴン」とすごした夏 「ヒナゴン」と西城の夏、ずっと 親愛なる「ヒナゴン」へ 「ヒナゴン」大応援団 担当者日記 リンク集

 1970年代、ネス湖のネッシー、ヒマラヤの雪男、北米のビッグフットなど、世界中でさまざまな未確認生物の目撃証言や写真撮影で、一大ブームになって大人から子供たちにまでみんな夢中になった時代があります。そして日本でも、今から30年ほど前に広島の小さな田舎町で謎の生物“ヒバゴン”が実際に目撃されました。
 その目撃証言は信憑性のあるものが20をゆうに超えて、ヒバゴンの噂は一気に全国に広がりました。そしてテレビ局、新聞社、大学の探検隊などがその町に集中し、観光客も集まりだして、マスコミが取り上げて大騒ぎに発展したのです。そこで町役場は「類人猿係」なるものを設置して事の収拾にあたりました。そこは広島県比婆郡西城町(現在の庄原市西城町)・・・。

 原作は「ビタミンF」で第124回直木賞を受賞し、幅広い世代から熱い支持と人気を集める作家、重松清の「いとしのヒナゴン」(文藝春秋社刊)。重松清ならではの社会風刺と現代の教育問題とユーモアある視点を持った原作を、監督・渡邊孝好のメガホンによって、爽やかな笑いとちょっとせつない感動をまじえたエンターテインメント作品となっています。
 主人公のイナゴのイッちゃんを演じるのは伊原剛志。少年時代にヒナゴン探検をし、ヒナゴンに憧れ、ヒナゴンを信じている、やんちゃで純粋な心を持った元ヤンの主人公をいきいきと演じています。
 ヒロインの信子役には近年女優として進境が著しい、井川遥がチャーミングな魅力を全開にして、物語をグングン引っ張っていきます。
 そして、イッちゃんの幼なじみには上島竜兵、鶴見辰吾、嶋田久作といったバラエティに富んだ魅力的なキャストが実現。信子の幼なじみには柳家花緑、松岡俊介と悩める若者たちを演じます。
 比奈町類人猿課に大ニュースが飛び込んで来た・・・。これで町中、日本中、世界中が大騒ぎ!
 「比奈町は日本一有名な町になるぞ。ええか、みんな。気合いじゃ!」・・・とイッちゃんこと五十嵐町長はこう宣言したのです。
 イッちゃんは暴走族上がりの元ヤンの若き町長で、矢沢のエーちゃんを心からこよなく愛し、「成りあがり」をバイブルにしてこの町で生まれ育ったのです。合い言葉は「気合い!」と「ハートで汗かけ!」です。
 累積赤字は重なり、合併問題に揺れる広島の田舎の小さな町、それが比奈町。
 日本中のどこにでもある町。
 山も、川も、空気も、風も、みんな清々しく美しい。でも・・・。
 「やさしさ?親切?おせっかい?・・・だから田舎って嫌なの。うっとうしいの。息が詰まるの。ほっといて欲しいの!」
 そう言って、信子は生まれた比奈町を飛び出したのですが、両親に説得されてしぶしぶ東京からUターンして、比奈町の類人猿課に就職することになりました。
 しかし、町民たちは「類人猿課!?」と大反対。
 累積赤字で問題だらけの比奈町は、合併するしないで町を二分して大混乱。そんな時に類人猿課なんてとんでもない話というわけです。
 実は比奈町は、30年前にも“ヒナゴン”の目撃騒動があり、役場は類人猿課を作って一時的に日本中から注目を浴びて大ブームとなりました。しかし、マスコミに「嘘つき村」と叩かれ、笑い者にされ、大恥をかいたという少しつらい歴史があったのです。
 当時のヒナゴンの第一発見者が、信子の祖父・健作でした。嘘つきの始まりはホラ健だと、町中のみんなが彼を馬鹿にしていました。
 しかし、子どものイッちゃんはホラ健の話を信じて、仲間を連れてヒナゴン探検にでかけました。そして、深い山の中でヒナゴンに会ったのです。しかし、遭難騒ぎを起こした子どもの話を町の大人たちはだれも信じてくれません。「やっぱりホラ健にだまされた」と必死なイッちゃんを馬鹿にするだけ。
 でもただ一人、信じてくれた人。それは担任の宮本先生でした。
 現代の比奈の子どもたちは、“ヒナゴン”という未知なる生物を具体的にイメージできません。
 そして、信じる・・という事にどこか臆病になっています。
 「ヒナゴンなんて嘘に決まってる・・・」なんて言ってみても、思ってみても、比奈の子どもたちはヒナゴンの話を聞いて育ちました。
 類人猿課に反対し、町の合併を推進する大人たちも、実は心の中ではヒナゴンのことを気にしています。みんなふるさと比奈町が好きなんです。
 町長リコールの噂がチラホラと・・・。
 そんな時にイッちゃんの幼なじみのナバスケが怪しい健康ドリンクの宣伝チラシに町長の写真を無断使用して販売し、町民たちに告訴されるという事件が起きました。イッちゃん町長の立場はますます悪くなる一方です。
 しかしイッちゃんは心配する昔の仲間たちの言葉もまったく意に介さずに、まっしぐら我が道を突き進むだけです。気合い!の人生です。
 そして、みんなを引き連れて、30年振りに宮本先生に会いに行きました。先生は元気でしたが、しかし・・・。
 そんな時に、ヒナゴン捕獲!のニュースが類人猿課に飛び込んで来たのです。